ボトックス治療
ペインクリニックで用いるボトックス治療には、美容領域でしわ予防として行われる表情筋コントロールをするボトックスと、神経痛の領域に大量のボトックスを皮下注射するボトックス治療があります。
表情筋のしわに対するボトックス治療
当院ではペインクリニックの一環として、ボトックスによる表情筋コントロールに力を入れております。近年ではボトックスで表情筋を制御することで逆説的に心の緊張状態が緩和され、うつ病などの症状が改善される報告がなされてきており疼痛が強く辛い方の場合にボトックスによる表情筋コントロールが疼痛緩和に有効な場合もあると考えております。
当院はあくまで患者様の健康を守ることを第一としている循環器内科、消化器内科、ペインクリニックとしての医療施設ですので、いわゆるアップセルなどは存在せず、表記してある価格でのボトックス注射のみとなっております。他の美容施設のような豪華なホスピタリティやサービスはありませんが、よくお話させていただき、合併症を理解いただいたのちご希望に沿った治療を行います。
険しい表情や精神的に苦しいときにでる表情をボトックス注射で抑えることにより精神面での落ち着きを得られることが知られており、当院では痛みに関連した表情筋に対してボトックス注射を行います。これらは継続して行うことが重要であることもわかっており、有効であった場合ほど継続した治療が望まれます。ボトックスは心や痛み、お肌の内科治療の重要な一要素ととらえることもでき、継続して使用することで継続して安定した治療成績を実現することができます。
また、非常に重要なポイントなのですが、当院では最小限のボトックスの単位を使用します。ボトックスは生涯の使用量に比例してご自身の薬剤耐性が出て効かなくなってしまう可能性が高くなります。薬剤耐性が付いてしまうと、ボトックス治療の恩恵に授かることはできなくなります。したがって、数十年という長期間で使用するためには必要最小限の単位数で使用する必要があります。当院では患者様も、医師も手間がかかりますが、個々人の最小限の単位数を探り必要最小限のボトックス使用にとどめます。ボトックスを小さな量で正確に打つためには、より高い精度での技術と時間が必要ですが当院はそれに取り組んで参ります。必要最小限の単位で打ちますので追加投与が必要になる場合があることをあらかじめご了承ください。この点は表情筋の治療だけではなく、痛みの治療においても同様です。
当院はアラガンのボトックス製剤のみの使用となります。価格は左右両側での価格です。
※妊娠予定、妊娠中、授乳中の方の治療はできませんが、薬剤メーカーが非常に警戒している部分であり、非常に厳しい記述が散見されます。これに関しては基本的に同意とした上で、正確な表現としては、米国の妊娠カテゴリーはCであり、ボトックス製剤は筋肉注射後72時間で血中には存在しなくなること、人間に対する極量を超える投与の24例でも胎児奇形は認められなかったことを鑑みると、最終月経から2週間以内でのボトックス治療であれば、もしもその後に妊娠が判明した場合も、必要以上にその影響を心配する必要はないのではないかと考えております。
・眉間のしわ(顔をしかめた時にでる)に対するボトックス治療22000円
うつ病に最も有効性があるといわれているボトックス治療です。いわゆるしかめ面を予防することで、非常に気分が楽になり、たとえばうつ病の評価のためのスコアリングが有意に下がることが知られております。
・額(おでこ)のしわに対するボトックス治療27500円
20か所ほど注射するため、痛みに強い方、弱い方によって施行法が異なります。通常冷却による疼痛軽減で行いますが、どうしても痛みに弱くご希望の方は4か所疼痛ブロック注射をした上で行います。(申し訳ありませんがこの場合薬剤および技術料16500円をいただきます。先端恐怖症などで全身麻酔ご希望の方は専門医による全身麻酔で行い、薬剤および技術料が99000円となります。)
・目尻(じり)のしわが気になる方に対するボトックス22000円
気になる方はご相談ください。随時行っております。
・お口に対するボトックス(いじわるな表情の時に使われる筋肉) 22000円
お口周り、ひいてはお顔周りを支配する三つの下制筋のうち口角下制筋という筋肉に対するボトックス注射です。口角が挙上し優しい笑顔になります。これに付随して、下唇を突き出しすぼめるオトガイ筋に対するボトックス注射(22000円)を行うことでさらに優しい表情となります。
・エラボトックス 左右で88000円
いわゆる小顔となるためのボトックス治療です。顎の咬筋の容積を減らし、見た目が小顔になります。エラボトックスは時として非可逆的であることが知られており、合併症として、2か月待てば元に戻る他のボトックス治療よりも重篤なものとなります。当院ではご希望の方、および歯ぎしりがひどく、睡眠障害がある方などに慎重に投与いたします。
・ガミースマイルに対するボトックス 左右で55000円
笑った時に歯茎が見えてしまう方のためのボトックス治療です。
これは治療後笑えなくなるなどの副作用が出現することがあり、副作用を十分に納得された上での加療となります。治療には細心の注意が必要であり、強度を注意深く調整する必要があります。
神経痛に対するボトックス注射
当院では三叉神経痛と帯状疱疹後神経痛に対して、ボトックス注射による疼痛軽減治療を行っております。これらは一定の科学的な根拠のある治療なのですが、残念ながら現時点では保険適応ではなく、自費診療となります。
通常のお顔のハリを持続するためやしわ治療に使用されるボトックス治療に比べて、ボトックスの使用単位数が多く、そのため比較的高価となります。
その効果として、現在の痛みが半分程度になるという報告がなされています。
原則として第一選択は内服をお勧めいたしますが、有効でない場合にはブロック注射と並行して追加する治療としてボトックスを提案いたします。
これらの有効率は高いものの、三叉神経痛領域(お顔)のボトックスに関しては表情の非対称性や注射した後の内出血などの合併症があり、帯状疱疹後神経痛に関するボトックス治療では周囲の筋力低下などの副作用がある可能性があります。
三叉神経領域のボトックス注射において顔面非対称が出現した際には、場合によっては、反対側に同様の注射をすることで非対称性を避けることもできますが、状況によって異なります。
通常のお顔のしわに対するボトックス治療とは異なり、ボトックスの使用量が多いため、製薬代が高く、一回の治療には約80000円から100000円ほどかかります。有効率(多少なりとも痛みが軽くなる確率)も8割ほどではありますが、必ずしも治療効果が出る方ばかりではありませんのでよくお話しした上で開始します。
※この系統の痛みには非常に苦しまれている方が多く、当院では過分な手技量はいただいておりません。そもそもの製薬代が高価であることをご理解下さい。
一度の治療が有効であった場合、2か月から6か月ほど効果が持続する可能性が高く、その後はご希望であれば繰り返し注射を行います。